久々に、高校野球が楽しい夏だった。
個人的には、優待するなど県外からも優秀な生徒を集めたり
する風潮がヒートアップしてきたことから、高校野球には
幾分さめていたのだが、それでも今回は楽しかった。
今回の大会は、佐賀北高校のための大会といっても過言じゃない。
延長15回の引き分け再試合。
帝京高校戦でのサヨナラゲーム。
そして、劇的な満塁ホームランでの優勝。
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しかし、最後に残念なことがあった。
それは、決勝戦の相手高校監督による、
「押し出しの場面のボール判定は誤審だ」
という怒りの声が公に発せられたことだ。
一生懸命、球児とともに汗を流してきた日々は、
さぞかし重みのあるものだろう。
日本の高校の頂点が目の前で手のひらから
すり抜けていったその気持ちは察するにあまりある。
しかし、怒りに任せて
「誤審だ、あれは本当は得点じゃない」
などと公にぶちまけるのでは
同じように懸命にプレーして真紅の旗を勝ち取った
佐賀北高校の球児たちがあまりにもかわいそうだ。
それに、敗退した球児たちに
「あの誤審がなければ」
などというその場に立ち止まり、乗り越えることを阻害させるような思いを
残してしまう危険がある。
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たしかに、その投球自体は、どちらの判定でもおかしくないきわどい球だ。
しかし、審判の判定は
「ボール」
だった。
でも、野球というルールではこれが事実だ。
その誤審を乗り越えてでも勝つのも、一つの実力だというのは、
きっと、だれよりも彼らがわかっていることではないのか。
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もし、これが誤審だと講義するなら、今後の高校野球のためだと
思うなら、怒りに任せてぶちまけるようなことは大人としてふさわしくない。
それで試合結果が変わるわけでもないのだ。
ただ、双方に後味の悪さが残るだけだろう。
後日、書類を提出するとか、高野連を訪れて申し入れを行うとか
そういう方法は考えられなかったのだろうか。
そして、その一方で、努力の末に負けてしまった球児たちに
「社会に出れば、このような場面はまたその人生に立ちはだかる。
そのときに、決して腐ってはいけない。
それを乗り越え、またステップアップしていくことに踏み出すのだ」
と教えることはできないのだろうか。
本当に、良い大会だっただけに、残念なことだった。
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でも、押し出し判定と、ホームランを打たれた野村投手の
さわやかな言葉に救われた気がする。
「悔いはない。審判が正しいから仕方ない」
彼の瞳の奥にははきっと、悔しさや色々な感情の中に、
未来が映っているのだろう。
(若さって、すばらしい!)
これからの高校野球も、楽しみだ。