コンサルタントとしてスポーツショップの経営者さんに売り場レイアウト改善を
提案するという店舗レイアウトを学ぶ演習指導中、研修生の方とこんなやり
取りをした。
研「男性と女性のスポーツウェアの配置は分けたほうがいいのですよね」
私「あんまり男性女性が入り混じるようであれば、分けたほうがいいかもしれませんね」
研「それで、男性と女性のウェアは、店の手前と奥のほう、どちらをどちらに
おけばいいのですか」
私「(ご質問の意図は)どういうことですか?」
研「通常、決まりというかどちらをどこに配置するのですか」
私「法則などはありませんよ。どういう考え方かによって変わってきます」
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いまいち腑に落ちない表情の研修生に、
私の説明も不十分だったかな、と反省しつつ、一方では
たとえば一般的に「男性が手前、女性が奥」などとうたっている
”説”があれば、彼はそれを取り入れるのだろうか?
とふと考えた。
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そういえば、診断士養成課程が新制度になってから、実習を
するたびに市販のノウハウ本を持ち込む研修生が確実に増えた。
おそらくは、あまり勝手がわからない分野などでの実習に不安を覚え、
参考とするために買ったのだろうし、
(他班にはそのような本のコンテンツ丸写しの研修生もいたようだ)
大変な一次試験を筆記で合格してから大学校にくる、現在の研修生の
特徴でもある。
しかし、それこそが「落とし穴」だと自分は考えている。
落とし穴とは
「(現場を見ているはずなのに、実際は)現場を見ずして、一般論を適用してしまう」
という落とし穴だ。
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コンセプトを前面に押し出す店ほど、そのコンセプトの内容の
表現、ターゲットへの訴求ということを考えて売り場をつくることが
大切だ。
たとえば、ウェアの配置だって、外から店内を見たときに
男性物が多く見えるか、あるいは、女性物が多く見えるか、
またそれはどのようなデザインのものが、どの程度どのように陳列されているか
によっても店の印象も訴求も変わってくる。
それは、一概に「男性物、女性物がどうこう」ということはいえるわけがなく、
あくまでその店の戦略的思想から落とし込んで考えていかないといけない。
どのような人に、どのように買い物していただくか、それを設計するのが
店舗レイアウトの大切なポイントでもある。
何かを学びたい、スキルを身につけたい、と思うほど、
「これはこうやるものである」
という”答え”を求め、それを教わろうとしてしまう。
そういった意味で、自分はよく実習でいう。
「お決まりの答えなどは用意されていません。
それは、店によってそれぞれにあるものです。
だから現場をよく観察し、話を聞くことが重要です」
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今日、私に質問してくれた研修生に十分に意図を伝えることは
できなかったかもしれないが、これからの実習を通して、
そのような現場の視点を学ぶ機会が生かされることを願っている。