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由利本荘の、とある夜

9月に由利本荘市で行った

「みんなで考えアイデアブラッシュアップ」創業セミナーも、今年で2回目。

昨年に引き続き、はじめはどんなセミナーかと訝しがっていた?受講生も
回数を重ねた後半には、彼らの優しい人間性もあり、すっかりと打ち解け、
自分のアイデアを語りあい、そして考えの甘さや夢を実現していく方向性
へのヒントを得られたようで、とても良い雰囲気となった。

最終回の前日、珍しく独り、由利本荘のまちに出て
以前「Panda研究会(やりがい商売研究会)」に参加してくれた一期生の
「地球屋 太田亭」に歩いて行った。

まちは翌日のお祭りを控えた前夜。

初秋に暮れゆく町には、人の姿はまばらではあるが、灯りのともった
提灯がいくつも、穏やかな風に揺れていた。

日本の夕暮れの色彩。お彼岸の色彩。

僕はとても心ひかれる風景だった。

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18時過ぎにお店に入ってカウンターの隅っこに腰掛ける。

「あら、先生!?」

お店に入ると、ママが出迎えてくれた。独りで来たのは初めて
だし、先週は受講生の皆さんと来ていたからまさか、来るとは
思わなかったのだろう。

「そっちのすみは顔見えないから、こっちに来てよ」

真冬でも半そで短パンの元気のよい大将にいわれて、
僕は座る場所を変えた。

料理はお任せにして、ビールもそこそこで切り上げ、
目下キャンペーン中のトリスのハイボールをあおる。

大将やママと、お店のこと、まちのことをたくさん話したが、
個人的なことはもっとたくさん話したと思う。

独りで来た感じがせず、とても心温かな居心地の良い時間だった。

とおくから、か細いお囃子の音が聞こえてくる。

 

「そろそろこの町内の山車が通るよ」

町内の山車が通るのだというから、供え物の一升瓶のお酒を日本抱えた
大将と外に出る。他のお客さんも出る。

住宅街の路地の向こうから、山車とお囃子の音が近づいてきた。

山車を囲む人の数は、御世辞にも多いとは言えないが。

 

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小ぢんまりした山車には、今年は傾奇者の前田慶次の人形が飾られ、
その前で子供たちが舞っている。
その山車を大人や子供たちが曳いていく。
沿道には近所の住民が出てきて、この山車を見守っている。
暗い路地に浮かび上がる山車。山車の明かりに照らされ、
山車に見入る人々の顔が浮かび上がる。

異邦人の自分にはとても素敵な光景だった。

山車が目の前に来ると、大将がお酒を渡す。
このお酒は、その後、販売され換金されて、大切なこのお祭りを
続けるための資金源にもなるという。

ハッピ姿の若い男性衆が

「後でお店、よりますね」

と大将に告げる。

「みんなしこたま飲んだ後に来るんだよな!ここに来るときは
すっかり酔っ払いなんだ」

大将は目を細めて笑いながら僕に言った。

聞けば、このお祭りも子供たちが減って、他のところの子供たちも
混じっているのだという。
地域の人々をつなぐこのお祭りは、あとどれくらい持つのだろう。

そんなさびしい気持ちを抱いてしまった。

「祭りの日は、今の時間暇なんだよね」

そういって隣に座った大将としばし歓談。

しばらくしてハッピ姿の若い女性が入ってきて、大将、ママ、僕と
4人で他愛ない話に盛り上がる。

23時を回って、僕が眠そうにし始めるとそれを見て大将が
お開きをさりげなく宣言。

「また来るね」

と言い残し、店を出たころには、すっかりと祭り前夜の喧騒も身を潜め、
ほてった体にひんやりとした由利本荘の風が吹いていた。

体に残る心地よさと、
しばらくまたお店を離れるちょっとした寂しさ、
そして楽しい時間の思い出をしまいこみながら歩いた。

居場所があるうれしさ、というのはこういうことなのだろう、なんて思った。

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2010年09月26日 11:57に投稿されたエントリーのページです。

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