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唐津にて 唐津の料理宿 松の井

RIMG0125 唐津城

RIMG0195 虹ノ松原

の間くらいにある旅館、

RIMG0256 松の井

さんに宿泊しました。

一泊18,000円くらい。
普段質素な生活をしている自分としては大奮発です。
もっとも、今回は時間的な都合があって、レンタカーも借りなかった
ことだし、レンタカー代を宿代に回した、と考えるようにしましたが。

松の井さんは、事前に下調べしたときにも、
インターネット上ではずいぶん評判のよい宿でした。
「じゃらん」のサイトの、宿泊者による口コミの書き込みにも、
旅館の方が丁寧に回答の書き込みをしています。

一方では、そこそこの看板を掲げているお店でも、口コミで
評判が悪かったり、
あるいはマイナスの書き込みに対して一見はお礼を言っているように
見えても、実は反論しているような旅館がある中で、
松の井さんの書き込みはしっかりしていました。

+++

まず感心したのは、旅館の入り口に、事前に伝えていた
到着時間にほぼ時間通りに到着したときのこと。

門をくぐる前に、女性が出てきました。

松「お名前を伺ってもよろしいですか」

私「はい、伊藤です」

そういうと、女性は私を旅館に案内しようとしました。

私「あ、暗くなる前に、ちょっと松原を見てきます」

松「それでは、お荷物をお預かりしますね。松原に行くには…」

と行き方も教えてくれた。
もっとも、天邪鬼な私はすぐさまわき道に入ったのですが…。

+++

1時間くらいして旅館に戻ると、
先ほどの女性がまた出迎えてくれました。

部屋に案内されます。
「金獅子の間」といいました。

松「この旅館のお部屋には、曳山の名前がつけてあるのですよ」

部屋に入ると、先ほど預けた荷物が片隅に置かれていました。

きっと、彼女は私たちが到着する時間と、
私たちの年齢(ネット予約するときに入力する)、
もちろん名前も事前に覚えていたのでしょう。

だから、私たちが旅館に入る前に出迎えられたし、
「伊藤です」
としかいわないのに、荷物は早速部屋まで運ばれているわけです。

+++

松「料理は何時にされますか」

時間は18時40分。

普通の旅館であれば、早いうちに出してしまいたいから
すぐにでも持ってきたがるものです。

しかし、こちらとしては汗を流してさっぱりとしてから
おいしい料理を食べたいもの。

こちらが返事をする前に、

松「今からお風呂に入られて、それからにしましょう」

料理は19時半にしました。

松「それまで、お風呂は貸切ですよ」

と彼女は言います。

松「本日、男性のお客様が少ないので」

なるほど、その男性は今、食事中なのでしょう。

松「あと、浴衣は”大”を二つ用意しておきました」

実は自分は今回、家内と訪れたのですが、
私の家内の身長は175cm。
たいてい、旅行に行くとまず行う作業として、

”浴衣の交換”

があるのです。というのも、通常、旅館の客間には
”大””中””小”をそれぞれ一枚ずつおくからです。

しかし、彼女は、先ほど旅館の前で私たちが荷物を
預けたときに、家内の身長をみて、すぐに浴衣を
交換しておいてくれたのです。

おかげさまで、あまり大きくないお風呂ですが、
ゆったりのんびりつかることができました。

+++

RIMG0257

+++

「松の井」さんの売りは、なんと言っても、地元の素材を活かした料理です。

さらには、それを盛り付ける器はすべて「唐津焼」であり、
有名な陶芸家の作品まで含まれます。

一見地味な唐津焼の器を、実に落ち着いて、アクセントある色使いで
盛り付けています。

RIMG0259

松「この旅館は温泉ではありません。だから、料理はちゃんと
オリジナリティあるものをお出ししているんです。
この旅館では、出汁もすべて、ちゃんととっているんですよ」

なるほど、目の前に出されているものの価値を教えられるほど、
なんだか味わいも増してくる。

一品一品の量は多くない。しかし、少量のいろいろな料理を
味わえるのは、本当に楽しい。

RIMG0260
ハモのお吸い物

RIMG0261

RIMG0262
唐津といえば、呼子のイカの活け造り。
まだ新鮮で、透き通っている。
実はこりこりしていてぬめりがなく、噛むほどに甘い。

げその部分は、焼くか、てんぷらにしてくれる。
私たちはてんぷらにしましたが、これもまた美味。

RIMG0264 
酒盗につけたイカを、アツアツの石で焼いて食べる。

日本酒がすすむ…。

この間、料理を運んでくれた女性は3人でしたが、
それぞれとてもなじみやすい方たちでした。
料理のことだけでなく、世間話や自分たちの話で
盛り上がります。
そのうちの一人は、佐賀生まれの私の祖母が住んでいた
家から、さほど遠くないところに以前住まわれていました。

RIMG0266

アラカブの煮付け。アラカブとは、カサゴのこと。
熊本の赤酒と、醤油のみで味付けをしているとのこと。

これがまた、変な雑味がせずさっぱり、しかし、どこか甘く感じ、
淡白な白身から噛むほどににじみ出る味わいに、つい無言になって
パクついてしまいます。

私「旅館の売りというだけあって、本当にこれは食べてよかった」

松「そういっていただけると、厨房の若い人も喜びます。朝から
ずっと、煮汁をかけて煮ていたんですよ」

このアラカブの煮付けは、常連のお客さんにも評判がいいらしい。

+++

程よく酔っ払ったこともあり、一番最初に私たちを出迎えてくれた
女性としばらくお話をしました。

自分たちがいろいろな旅館で受けてきたおもてなしと、そのときの気持ち。
そして、この旅館に来たときからうれしかったおもてなしについて、
彼女に伝えました。

松「ありがとうございます。そうやっていっていただけることの中から、
また私たちも気づいたり、ひらめいたりできるんです」

私「宿にとまっておもてなしを受けるとき、私は女将や仲居さん
のおもてなしに対するプライドを感じることがうれしく思います」

そのとき私は彼女に、プライドを感じていたのです。

+++

翌朝、早めに出なくてはならない私たちは、広間で一番に食事をしました。

朝食とは思えない手の込んだご飯を食べている間、昨晩の女性たちが
また料理を運んでくれました。
ちょっと驚きました。
というのも、夜と朝は交代制だと思っていたからです。
寝る時間はあるのでしょうか…。

+++

すっかり満足した私たちは、女性に見送られながら宿を後にしました。

+++

おそらく、推察するに、唐津の旅館は11月の唐津くんちや、
海水浴シーズンがあるとはいえ、決して楽な経営環境では
ないと思います。
大都市からは日帰り圏内でもあります。

松の井さんも、きっと楽な商売はされていないでしょう。
ましてや、温泉だったり、砂浜に面しているわけでもありません。

しかし、私はこれからも残り続けてほしい宿だな、と感じましたし、
旅館にとって「じゃらん」で見たような口コミのよさや、
それに対する丁寧な応対はチャンスを獲得するためにはとても
大事だと思いました。
それをもたらすもの、それはきっと表面的な取り繕い出はなく、
日常的な反復的な実践あるのみなのだろうと思います。

あたりまえのおもてなしを、丁寧に、当たり前にできること。
そこから得られたうれしい反応にプライドを持てること。

これって、大切ですね。

唐津の料理宿 松の井
http://web.people-i.ne.jp/~matsunoi/

「じゃらん」の松の井のページ クリック

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2008年06月03日 01:19に投稿されたエントリーのページです。

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