由利本荘市商工会での今年度の「やりがい商売研究会」(P研)の
第2回目、その懇親会も盛況に終わった翌日。
朝7時48分の羽越線で秋田駅まででて、シャトルバスで秋田空港、
10時45分くらいのANAで正午前には東京に戻る予定だった。
が、昨日からの雨は暴風雨に。
泊まった「本荘ステーションホテル別館」というのが、
線路から直線でも50mは離れているだろうに、電車が通るたびにユラユラゆれる
代物なのだが、その建物に暴風が打ち付ける音もまた夜中はよく
聞こえた。
羽越線は2005年に突風で「特急いなほ」が転覆した路線でもあり、
ユーラシア大陸からやってくる風をまともに受ける日本海沿い平野部を走る。
「もしかしたらな~」
と思い、宿からケータイで乗り換え案内を検索。
案の定、
「運行情報 羽越線 暴風のため運行見合わせ」
だった。
秋田空港へのシャトルバスは、予定では8時51分秋田駅発。
まあ、その一本後の9時20分のやつでも間に合うだろう。
それを過ぎればアウトだ。
駅に向かう。自分が乗る予定よりも前の電車が未だ来ていない。
10分…20分…時折、
「現在電車は象潟駅です」
などとアナウンスが入るが、ちょっとまてよ、
15分前も象潟駅じゃなかったっけ?
どうやら、電車は駅で停まり、様子を見て暴風の間隙をつくように
前進してきているらしい。
な、なんとスリリング。とはいえ、この地域の人にとってはこの光景も
生活の場面の一部なのだが。
やはり、このままでは飛行機には間に合いそうにない。
かつては本荘からも空港バスが出ていたのだが、数年前に
路線が廃止されている。
スマートフォンでネット上を検索していたら、
本荘市内から5000円ほどで空港にいける乗り合いタクシーというのを
見つけたので電話してみた。
タクシー会社「前日12時までの予約なんですよね~」
私「そうですか、電車が停まっちゃってて、困ったなーと思って」
タクシー会社「すみません…」
まあ、完全予約制なのは仕方ないとして、こういうときに
ライバルのタクシー会社などに連絡を入れて融通を利かせてくれたり
してくれると、一発でファンになるんだけどな~、
等と思いつつ、また駅の待合室へ。
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結局、運行再開した羽越線に乗れたのは8時45分。
7時の弘前行きが、なんとも1時間45分遅れで到着したのだった。
秋田駅まで1時間。飛行機は絶望的だ…。
しかし、秋田空港は不便極まりない。
もし、秋田駅から片道40分かかるシャトルバスを逃してしまったら、
よそから来ている我々は秋田駅から7000円かけてタクシーで向かうしか
方法がない。
以前、そういうことがあって、それで7000円かけるなら、
飛行機のキャンセル料払って新幹線にしたほうがましだと
新幹線に変更したこともある。
それ以来、秋田へは9割がた新幹線で通っている。
ただ、今回は病み上がり、4時間の新幹線の車内は
病気を拾いやすいこともあって、新幹線より断然早く、密室空間
に閉じ込められる時間の短い久しぶりの飛行機だったのだが…。
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ちなみに、自分が年間を通して体調を崩すきっかけで断然トップなのは、
「新幹線での移動」
である。というのも、新幹線は長い時間密室に閉ざされるし、
たいてい自分は眠り込んでしまう。眠っている間の人間の防御力は
低下する。
だから、冬季は必ずマスクをしているし、乗っている間ののど飴は
必須アイテムだ。
先週自分は3日寝込むほどに体調を悪くしたのだが、それも出張での
新幹線がきっかけだった。
あれは確か前の週の上越新幹線、自分の後ろの席のスーツ
姿の30代半ばくらいの男性は、明らかに体調が悪そう。
電車が東京駅を発車してから新潟に着くまで始終ずっと、ゲホゲホしている。
しかも、
マスクもしないで。
…体調悪い彼には申し訳ないが、これは、一種のテロだと思った。
無差別にウィルスをばら撒いているのだから。
一方自分としては、いつも新幹線に乗るときに用意している
新品のマスクをつけて乗っていたのだが、それでも途中寝てしまったり、
スキを見せたのがいけなかったらしい。
しっかりとウィルスをもらってしまったのだ。
(ウィルス感染は、ほとんどは飛まつ感染。ウィルスを持っている人が
せきをすれば、飛まつは数メートルにわたって飛散する。ウィルスによっ
ては、30分空中を漂うこともある。)
しかし、新幹線も、長旅に使われる車両なのだから、加湿するなど
もうちょっと「伝染病予防」の対策が取れないものだろうか。
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話しは元に戻り…。
羽後本荘の駅で乗り込んだ3両編成の羽越線はなかなか発車しない。
その間も、車体は風でグラグラと揺れている。
なるほど、これはたいした風だ。
やっと動き出したかと思うと、亀のような歩みである。
でも、風で転がるよりは安全運転はありがたい。
幾駅か過ぎて、途中、いきなり電車がやる気を見せた加速を
したりして「オォッ!いけえっ」と期待したりする。しかしすぐに亀さんに戻る。
大荒れの日本海と立ち枯れの松林、酷く窓に打ち付けては
滝のように流れる雨雪、雲間からのぞく青空などの環境に
耐えてけな気に進むぞ、ピンクと紺の線が入った小さな羽越線。
しかし、その小さな車体に限界が来たのだろうか。
まだ由利本荘市内の岩城付近、国道7号線沿いの
小さな道川駅まで来て、電車は完全に停まってしまった。
停まってしまった。
立ち客はいない程度の車内であったが、皆じっと運行再開を待つ。
「これから学校に行っても、授業終わるね」という学生。
「時間に間に合いそうにありません」という成人女性。
「これで秋田行っても、本荘に帰れないな~」と誰かに電話している女性。
なんだかイライラしてブツブツ行っているスーツ姿の男性。
その間、自分はなにをしていたかといえば、ケータイ、スマートフォンを
駆使しつつ飛行機の予約をキャンセルし、ほかの帰宅方法を探し、
結果的にえきねっとで秋田新幹線の予約をとっていたのだった。
12時1分の窓際の指定席をきっちりと取ることが出来たのだが、
これが秋田駅についてからの手配だったら、無理だったかもしれないことを
考えると、時代も便利になったというものだ。
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「当電車はここから秋田駅までバスの振り替え輸送になります」
と車内放送がかかったのが停まってから15分ほど。
さすがにこれ以上は困難のようだ。
振り替えのバスは秋田駅を発車したらしい。
近所に営業所などはなかったようだ。
振替バスが道川駅についたのは
それからさらに30分以上たってからの事だった。
この頃になると自分は待ちくたびれてむしろ、旅情をいかに感じるか、
思案に暮れている次第だった。
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2台の緑色のリムジンバスが到着した。
「なまはげ号」
だそうだ。なんだ、見た目はただの緑色のバスで、なまはげ感を感じない。
それとも、クラクションを鳴らすと
『ブッブー!』
ではなく
『なぐごはいねがぁ~』
とでもなるなら楽しいなぁ。
バスに乗り込む。
車掌さんや駅員さんは「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と
恐縮しきりだが、これは天候だから仕方ないだろうに。
都会だと、こういうときに駅員に食って掛かったり、暴力を振るうやから
が出るのだから不思議だ。天気をどないせえというのだろう。
バスは紅葉も終わって落ち葉が積もる山間を進んでいくし、
(秋田の紅葉の盛りの頃は、山々が燃え盛るようで実に見事)
なんだか期せずしてプチオプションツアーに参加した気分だ。
こんな風に秋田を実感するとは、旅とは意外性のものである。
と、妙にワクワクしてくる。
バスはスイスイと自動車道を秋田駅に向かって走っていく。
しかし、なんだか寒い。このバス、なんだかスースーと隙間風が酷い…。
今回の出張で初めて使用したユニクロの
ヒートテック・モモヒキ
の性能はなかなかだ。自分の下半身は温かく守られた。
これで1500円だったら、もう一つ買っておこう、そんな気がした。
11時10分、バスは秋田駅東口に到着。
自分の新幹線までには1時間弱ある。ちょうどよい。
いつもであれば1時間弱の行程に3時間。
その間にノロノロ走行にグラグラ揺れる電車、
飛行機のキャンセルから新幹線の手配、荒れる日本海から落ち葉の
積もる山間を見るプチ・秋田自然見学ツアー、そしてユニクロ・ヒートテック・モモヒキ
性能実験と、なんだか色々とあった…。
仕上げは、自分が今日本で一番好きな駅弁、「しらかみ弁当」を
秋田駅の売店で購入して新幹線で食べようか。
1000円です。
秋田駅の待合室のTVではNHKの富山の木彫り職人のドキュメンタリーが
妙なまったり感を演出していていい塩梅だった。
大曲付近から雪は横殴り
田沢湖あたりは雪が積もっていた
盛岡を過ぎると未だ晩秋
大宮での夕日はきれいだった