先程の話。
子猫を拾ったのだ。しかし、もう、手元にはいないのだが。
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事の経緯はこうだ。
事務所で名刺印刷の作業をしていた時、
ふと外で仔猫のしきりに鳴く声がするのに気づいた。
我が家の2匹の猫はすでに成猫、その声ではない。
窓から顔を出してみると、まだ1月ぐらいのヨチヨチした
子猫が、小雨に打たれながら隣家との壁際で壁を見上げて
鳴いていた。
今日は朝から我が家の周辺は雑草除去の業者さんが
作業をしており、その作業に驚いた親子が離れ離れに
なってしまったらしい。
まだ小さい子猫である。雨に打たれている。
すぐに保護しないと命が危険だ。
あわてて玄関を飛び出し(斜面に建つ我が家の玄関は
2階にある)、外の階段を下りて猫の保護に向かう。
子猫は壁際から離れ、駐車場の支柱と家の壁の間に
隠れるようにおびえていた。
そっと抱えあげると、バタバタ暴れる。
まだ、はぐれたてだろう、元気だ。
私の手は着実に”みみずばれ”が増えていく。
元気な男の子
とりあえず、家の猫には対面させずにキャリーのなかに
子猫を入れ、家の猫が入れない仕事部屋へ連れてきて
タオルで体をふいてやった。
しかし…困った。
この子をどうしよう?
とりあえず、ミルクを買いに行って、病院に連れていって、
飼い主を捜さねば。
我が家はすでに2匹の猫がいる。
まあ、いまさら2匹が3匹になったからって大したことが
ないようにも思うが、大家さんとの契約上は2匹だし…。
とりあえず、猫好きの姉や、猫を飼っている実家に電話した
もののやっぱり無理。
子猫は、タオルに顔をうずめるようにしてうずくまっている。
うう、お母ちゃん…食われるよ(←食わないよ)
困った。この子をどうやったら助けられるだろう?
ひげ面ですんません
↑記念にパチリ(本当に困っているのか?)
頭の片隅には「大家さんに相談して、我が家で飼うんだな」
と結論めいたものが見え隠れし始めた。
30分ほど思案していた時、猫の鳴き声に気づいた。
今度は成猫の声で、我が家の猫の声とは違う。
何か呼びかけるような声だ。
窓を開けてみてみる。
すると、まだ若い成猫が窓のそばにいて、目が合った。
私「仔猫をお探しですね?」
猫「白と黒の子なんです…」
母親が探しに来たんだ!!
ということで、あわてて子猫をキャリーから出して
100均のダイソーで300円の大枚をはたいて買った
バケツに入れ、本日二回目、玄関から飛び出した。
階段を下りてみると、母猫の姿はなかった。
きっと、私の姿を見て逃げただけだから、そんな遠くに行かないはず。
しばらく息をひそめて待つ。
家の陰から、おそらく母猫が逃げたであろう方向をちょっと覗いた。
いた。やっぱりまた戻ってきた。
ここで、母猫を脅かして遠くに行かれたら、母も子も不幸になる。
そこで、自分の姿が見えないように、子猫だけを右手に持って、
建物の蔭から母猫が見えるところに出し、そしてゆっくりおいた。
子猫がよちよち、おなかをするように歩く。
すると、
「ナゴナゴナゴ!」
ちょっと興奮するような母猫の声が聞こえた。
「ミーミー」
母にすがるような子猫の声。
建物の蔭からちょっと顔を出して見た。
子猫は一生懸命母を目指す。
母も確かめるように歩み寄る。
やがて子猫が母猫にたどり着くと、白地にグレーのしましまの
美猫の母猫は子猫の匂いを嗅いでわが子であることを確かめた。
そして「ハムッ」と子猫の首を加えて持ち上げると、
私の視界から消えるようにひょいと段差を登り、2匹で去って行った。
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この一件、結果的にハッピーエンドになったわけだが、
私は母猫の母性愛と母を求める子の本能にいたく感動した。
我が家も2匹の猫を飼っていて、猫がいかに愛情深い動物かは
知っていたけれど、
はぐれた子供を諦めずに捜しに戻ってきて、
一生懸命鳴いて呼びかける姿。
また、再会できた時に母猫が子猫に呼びかけた嬉しそうな声や、
元気なくしょぼくれていた子猫が母親に向かって一生懸命近寄って
行った姿が印象的だった。
人間が手を加えたこの環境の中で、雨に打たれながらも
愛情をもって互いを求めあって生きていく親子。
今頃、あの子はお母さんの温かさを感じながら昼寝につくことは
できただろうか?
母子ともに、健やかな日々が訪れますように。と願わずにはいられない。
…久々の更新も、仕事の話ではないとは。