今年の6月に、福島県会津若松市の第3期中心市街地活性化計画が策定されました。
この計画、本来は会津若松という伝統的な地域にあって、観光や商業に偏重していた従来型の計画から、暮らし、生活、その地域の人々や培ってきたもの、そして何よりも将来に向けての目線にガラッとシフトした考え方がベースとなっており、とても印象的なものです。
2018年ごろから、中小機構での巡回支援の中で、
「これまでの中活の取組みをちゃんと振り返り、そして自分たちで新たな中活計画を作りたい」
という思いとお考えを聞いていたこともあり、セミナーや巡回支援を含めてご当地を訪問していました。
新型コロナ禍において、事業者の苦境にいろいろと急ぎの支援策を打ち出していくことに忙殺され、ご担当者がとかくご苦労なされ、一方でこの計画を作っていきたいと強い思いを持って進められていたことが胸を熱くする記憶に残ります。
前期までの中活の振り返りや今後の計画の方針を検討していく際、
これまで通りの歴史を前面に出した観光・商業を全面に打ち出していくべきかということに対して、私自身もどのような助言ができるか思案を巡らせました。
そして、新型コロナ禍でインバウンドと国内観光が途絶え、日本全国が苦境に陥る状況になりました。
全く持って、日本国全体が、多くの地域が「自力で持続可能」な状況ではないことが露呈したのです。
多くの中心市街地は「来ようと思う」きっかけづくりには力を入れつつも、「住みたい、住める」「働きたい、働ける」というところをおざなりにしてきたと感じています。
それでは、多目的で朝・昼・夜常に人が街にいることから、事業機会や環境、サービス等を向上していくミクストユースの状況は出来上がらない。
さらには、中心市街地を来訪する人は減り、特に、子供たちがまちの中で過ごせない。育っていない。
まちの中で記憶や体験をはぐくむ中から醸成される「ここじゃないと嫌だ」という地域への思いを育てている状況や環境がない。
会津では幕末を「維新ではなく戊辰」、と言います。今となればそれは閉鎖性を示す表現ではなく、アイデンティティ。
そのようなアイデンティティを自覚し、歴史を持ち、素晴らしい文化性と地域愛のある会津若松市の中心市街地もまた、同様の課題を抱えていると私は感じました。
中心市街地を単なる観光地ではなく、日常のよりどころにしていくこと、そこから子供たちをはぐくみ、継承し、将来を創造していくこと。
中心市街地活性化のストーリーは、「大切な物を温め、今でこれからを紡ぐもの」。
市のご担当者と熱く語り合ったことを思い出します。
会津若松市の新しい中活基本計画の紹介ページの記載はとても思いを感じます。
会津若松の大切な物、そして大切にしたい記憶をしっかり整理し、
「選ばれ、愛され続けたいという想い・思い」をしっかりメッセージとして伝えている。
中活計画の基本理念は「まちが育ち、人を育み、未来へつなげるまちづくり」。
基本方針1 地域経済のエンジンとして力強く成長していくまちづくり
基本方針2 「思い出」を生み、「想い」を育むまちづくり
この、基本方針2が特に印象的なんです!記載されている「目指す姿」は…
【目指す姿1】 豊かで多様な「体験」や「記憶」を生むエリア
様々な場面で中心市街地を使う機会があること
教育、文化、芸術などの面で、新たな価値観や経験を得られる場所であること
【目指す姿2】 人を惹きつける「居心地の良さ」を備えたエリア
多くの人が「行きつけ」や「お気に入りの場所」を中心市街地に持っていること
多様性にあふれ、互いの価値観を受け入れる文化が成熟しているまちであること
【目指す姿3】 地域ならではの「思い出」を生み、地域を担う人材を育むエリア
新型コロナ禍を経て、人々の価値観は変わってきている、というか、むしろ本来あるべき方向に回帰しているところがあると感じています。
そしてまた、まちづくり、中心市街地活性化も同様です。
本当に持続的な地域とはどのようなものか。
本当に受け継いでいきたいのはなにか。
いずれにせよ、そこには前向きな「人」の姿があること。
感動や喜び、交流や居場所があること。
本来、「超保守的」ともみなされがちな会津若松という地域が、とはいえ守りたいものを蔑ろにせず、このような方針を明確に打ち出したことは、私にとっては関係者のみなさんの本気の、真摯な地域への思いを感じずにはいられません。
会津若松市中心市街地活性化基本計画
https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2023042700033/