近視眼

近視眼

ふるさと納税で高リターンをうたい、
外資系WEB通販ギフト券で巨額の納税額を獲得して話題をさらっている地域がある。

「やりすぎである上に、地域への経済的恩恵が薄い」
という総務省からの注意に対しては反論していたのだが、この6月からふるさと納税における恩恵を受けられない対象外地域とされた。

それを受けてすぐさま対抗手段、逆手に取ったような
「規制後のふるさと納税を体感する30%還元300億円キャンペーン」
なる策を出し始めた。
素早い対応だし、逆手に取って生かしていく手法は機動的だ。
一方では、総務省や批判的な人たちを小馬鹿にしたような煽りの対応とも見える。

個人的には柔軟な取り組みや逆手に取った取り組みを機動的に展開していくことは嫌いじゃないし、行政があの手この手を考えて稼いでいこうというのは良いと思う。

ただ、この地域の取り組みには賛同できないのも事実。

民間企業が行うならまだしも、行政がなぜ、
「集めた税金」
をあえて外国に流していくようなことをしていくのだろう、という疑問がある。
それは、地域だけではなく国全体を豊かにすることなのだろうか。

たしかに、日本の地域の現状として苦しい財政と今後もより厳しさを増す事実がある。なりふり構っていられない、という地域がいくつか出てもおかしくないだろうし、それぐらいの危機感を持った方がいいのでは、という地域もいくつも見てきた。

少し路線がずれるが、
私が普段、仕事で地域を回っているなかで
地域の実力やこれからに明らかに見合わないハコモノ投資をしている、しようとしている、最近してしまった地域によく出会う。

大抵、そのような投資をするときには首長は市民を説得するためにある詭弁を使う。

「国からの制度を使っている。補助金がこんなに出ます。だから、我が市の持ち出しはこんな少しで済むのです」

まったくもって、日本の社会の将来に責任を持たない、
「自分だけの地域が良ければそれで良い」
というような近視眼の言葉に変換されて聞こえる。

仮にそれが補助金で賄われるとしても、その補助金自体は日本全国の子孫たちのための投資に使われるべきものであって、無駄、無理があるものを作るのはそれを奪っていること、ひいては日本社会に負債を抱えさせていることに変わりはない。

本題に戻ると、外国にお金を垂れ流す高返礼率、しかもお金を持っている人ほど得をするようなふるさと納税で巨額を獲得するというのは、自力でどうにかしようとしているように見えてその実は結局、近視眼的なあまりに利己的な取り組みである印象を拭えない。
地域イメージに影響をもたらすだろうし、そこに飛びついてふるさと納税をしようという行為も浅はかに見えてしまう。

奇しくもこの地域は先日、
戦争で島を追われ苦難を味わった元島民に対して
「北方領土を取り返すのは戦争しかないんじゃないか」
と発言した国会議員の選挙区でもある。

国や社会の将来を思うとき、
なんでも言っていい、なんでもやっていい、
というものではない。

そして一方で納税者もまた
「お得なものには飛びつかないと損」
「他がどうあろうと自分の満足」
に流される前に、
社会の一員として意識の高みを持っておくことがより一層大切な時代なのだと感じている。

伊藤大海 1976.2生まれ 東京都日野市在住。 まちづくりコンサルタント。 経済産業大臣登録中小企業診断士。 地域の資源に目を向けた活性化プロジェクトや活性化エンジン組成、事業構想支援など。
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